集団規定における現状と枠組みの再構築について
このブログは現行の、都市計画法・建築基準法・景観法の集団規定による居住環境の問題を整理し、地域性を反映できる集団規定への転換方法を研究するものである。良好な居住環境の形成を目的とする今後の法規制の構築のための基礎資料を提供する、序論的考察を試みた。
敷地の狭小化や細分化、建築形態の歪化、街並みの不連続性について指摘されることが多い。基盤整理が伴わないまま市街化が進んだこと、更に画一的にルールを定めた建築基準法により、どこの住宅地でも同じような形態と問題を抱えるようなった。また都市部の密集市街地対策の必要性は常に論じられている。
 このブログでは、都市計画法・建築基準法、景観法が規制・誘導を目的とした法律であることを踏まえる。その上で建築・都市形成の法手続きを調査し・分析し集団規定の枠組みを提案することが必要かつ適した方法と考える。都市計画や都市法は、単なる都市工学的な理論・技術やその法的反映としての技術的諸制度の集成や体系ではなく、その都市に生きる人々にとって価値ある内容の都市づくりを保障するような社会的調整の制度的技術と手続を組み込んだものであることが必要なのである。
 集団規定の枠組みの構築により、都市の事情、要請、個別別にメニューを指定することができる。各都市には特殊な事情があり、それぞれ都市のあるべき姿としてマスタープランが制定されている。個性の異なる様々な都市が特別な規定によらず良好な居住環境を形成することができる。
 また集団規定については宅地の形状及び規模がそこにおける建築物の形態を制約し、ひいては市街地全体の形態をも制約している。これまで工学的見地からなされた集団規定の研究は多い。立法についても技術者、技術系官僚の関わる範囲・影響力は絶大である。法学的アプローチで規制の成立過程・目的・問題の整理、集団規定の影響を分析することで画一性排除が必要である。
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国立・大学通り訴訟判決要旨 [2007年02月28日(水) ]
要旨は引用です
全文は本当に長いですから。
控訴審判決は住民側敗訴なものの地裁判決ははじめて「景観権」という権利を認めたもの。
それを前提に裁判官の要旨を読んでいただけると参考になるはずです。


現在、都知事選が話題なっており、建築家が立候補を表明し、首都移転、オリンピックの中止を公約したり、国立市長が都知事の石原退場要望の意見を表明したりと、何かといろいろなことが絡んでいる世の中です。




東京地方裁判所民事第40部 平成14年12月18日 判決言渡し

裁判官宮岡章(裁判長),綱島公彦,三宅朋佳

平成13年(ワ)第6273号 建築物撤去等請求事件



判  決  要  旨


(文中の頁数は,判決書の頁数を示すものである。)


主     文

1 被告明和地所株式会社及び別紙被告目録記載第2の被告らは,原告○○○○,同○○○及び同○○○○に対し,別紙物件目録記載2の建物のうち,別紙図面のAないしZの各点を順次直線で結ぶ範囲内の地盤面から高さ20メートルを超える部分を撤去せよ。
2 被告明和地所株式会社は,原告○○○○,同○○○及び同○○○○に対し,平成13年12月20日から前項記載の建物部分を撤去するまで,それぞれ1か月1万円の割合による金員を各支払え。

3 被告明和地所株式会社は,原告○○○○,同○○○及び同○○○○に対し,金900万円及びこれに対する平成13年4月12日から支払済みまで年5パーセントの割合による金員を支払え。

4 原告らのその余の各請求をいずれも棄却する。

5 原告らと被告三井建設株式会社との間に生じた訴訟費用は原告らの負担とし,原告らとその余の被告らとの間に生じた訴訟費用はこれを10分し,その1を原告らの,その余を被告明和地所株式会社の各負担とする。

*注 別紙被告目録記載第2の被告らとは,本件訴訟中に後記本件建物の分譲を受けた113名(以下「購入者」という。)である。
 別紙物件目録記載2の建物とは,本件マンション全体であり,そのうち,別紙図面のAないしZの各点を順次直線で結ぶ範囲内の部分とは,おおむね本件建物のうち大学通りに面した東側に位置する棟に当たる。



事 実 及 び 理 由


第1 原告らの求めた裁判(請求の趣旨)


1 被告明和地所株式会社及び別紙被告目録記載第2の被告ら(以下「被告○○○○ら113名」という。)は,別紙物件目録記載2の建物(以下「本件建物」という。)のうち、高さ20メートルを超える部分を撤去せよ。

2 被告らは,訴状送達の日の翌日から前項の建物部分の撤去に至るまで,別紙原告目録記載第1の原告に対し1か月101万円の割合,同目録記載第2,第3の各原告らに対しそれぞれ1か月11万円の割合,同目録記載第4,第5の各原告らに対しそれぞれ1か月1万円の割合による金員を連帯して支払え。

3 被告らは,原告らに対し,連帯して,1OOO万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日から支払済みまで年5パーセントの割合による金員を支払え。

*注 別紙原告記載目録第1の原告とは,原告学校法人桐朋学園(以下「桐朋学園」という。)であり,同目録記載第2の原告らとは,桐朋学園に通学する児童・生徒10名であり,同目録記載第3の原告らとは,本件建物の近隣住民10名であり,同目録記載第4の原告らとは,景観保護運動に関わる石原一子ら22名であり,同目録記載第5の原告らとは,桐朋学園の教職員7名である。


第2 事案の概要及び争点

 本件は,被告明和地所株式会社(以下「被告明和地所」という。)が東京都国立市(以下単に「国立市」という。)の通称「大学通り」に面する別紙物件目録記載1の土地(以下「本件土地」という。)を購入し(ただし,購入後に9筆を合筆),被告三井建設株式会社(以下「被告三井建設」という。)との間で建築請負契約を締結して別紙物件目録記載2の建物(いわゆる分譲マンション,以下「本件建物」という。)を完成させ,被告○○○○ら113名に順次分譲したところ,本件建物の近隣に学校を設置,居住,通学し,又は大学通りの景観に関心を持つ原告らが,本件建物が違法建築物であり,日照,景観について被害を受けるなどと主張して,本件建物のうち高さ20メートルを超える部分の撤去と,慰謝料及び弁護士費用の支払を請求する事案である。なお,当初は本件建物の建築工事差し止め等を求める訴訟として提起されたが,訴訟係属中に本件建物が完成し,被告○○○○ら113名に順次分譲されたため,完成した本件建物の一部撤去等を求める訴訟に変更されるとともに,建物の購入者らが被告として追加された。
 本件の主な争点は,@本件建物が建築基準法に違反するか否か,A景観に権利性が認められるか否か,B原告らに受忍限度を超える日照被害,景観被害その他の被害があるか否か,である。
第3 当裁判所の判断


1 本件建物が建築基準法に違反するか(9頁〜16頁)


(1) 当事者の主張(別紙主張要旨参照)
 原告らは、本件建物が国立市の定める建築条例(以下「本件建築条例」という。)の高さ制限に違反する建築基準法上違法な建築物に当たると主張するのに対し,被告らは,そもそも本件建築条例自体が違法であること,本件建物は,同条例施行当時(平成12年2月1日)において,同法3条2項にいう「現に建築・・の工事中」であったから,同条項により救済され,同法上の違法建築物に当たらないと主張している。

(2) 本件建築条例の適法性(9頁〜10頁)
 本件建築条例は,平成12年2月1日に改正されているところ,被告らは,この改正が被告明和地所による本件建物の建築を阻止する目的で行われたものであることを理由として,本件建築条例自体を違法,無効であると主張する。
 しかしながら,大学通り沿道地区においては,従来から,地権者らが並木の高さを超えない高さでの土地利用をして「大学通りの景観」を形成,保持し・国立市も・景観条例における「景観形成重点地区」の侯補地として,沿道の建築物を,大学通りの景観特性と調和し,バランスのとれた美しいものとすることを行政の景観政策の基準としていたのであって,沿道の建築物が並木の高さである20メートルを超えないものであることは,いわば暗黙の合意,制約とされてきた。それにもかかわらず,被告明和地所が,公法上の高さ規制が存在しないことのみを拠りどころとして,並木の2倍以上の高さの建築物の建築を強行しようとしたことから,急遽,それまでの暗黙の合意,制約を公法上の強制力を伴う高さ制限に高める必要が生じたことが,建築条例改正の動機であって,本件建築条例は,国立市の従来の景観政策の延長上にあり,建築基準法の定める目的を逸脱するものではない。その他,手続上も違法,無効としなけれぱならない点はない。

(3) 建築基準法3条2項「現に建築・・の工事中の建築物」の解釈(12頁〜16頁:)

ア 建築基準法3条2項は,新法適用に関する経過規定であり,新規定の適用による行政目的の達成と,建築工事中の建築物の完成に対する建築主の期待や経済的な利益の保護の要請との調整を図る規定である。このような建築基準法3条2項の趣旨からすると「現に建築・・の工事中の建築物」とは建築物の完成に至っていない建築工事途中の状態を指し,これに該当するというためには,建築物の完成を直接の目的とする工事が開始され,建築主の建築意思が外部から客観的に認識できる状態に達しており,かつ,その工事が継続して実施されていることを要するが,建築物の一部が構築される程度に達していることを不可欠の要件とするものではないと解するのが相当である。

イ 根切り工事は,建築物を支持できる地盤が確保されたことに引き続き,建築物の基礎躯体や地下室部分を容れる空間を作り出すために,地盤面以下の土地を掘削する工事であり,建築物の形状に合わせ,地盤面の高さを精密に測定して,空間の形状を作るものであって、大規模建築物においては、その規模は膨大なものになる。このような根切り工事の目的及び実態によれぱ,根切り工事は建築物の完成を直接の目的とする工事であり,一般的には外部から客観的に建築主の建築意思を把握し得る建築意思の具現化としての工事(建築基準法3条2項のいう「建築・・の工事中」の「工事」)に該当する。

ウ 本件建物建築計画が明らかにされてから本件建物完成に至るまでの経過,本件建物の構造,本件建物建築工事に係る根切り工事の規模,前記の平成12年1月5日から同月30日までの26日間に行われた根切り工事の実態等を総合すると,同年2月1日の時点において行われていた本件建物建築工事に係る根切り工事の状態は,外部から客観的に建築主の建築意思を把握できる工事が継続中であると評価できる状態にあったというべきであり,したがって,本件建物は本件建築条例に係る改正条例が施行された時点において建築基準法3条2項のいう「現に建築・・の工事中の建築物」と認められる状態にあったと認めるのが相当である。

(3) 小括(16頁)
 したがって,本件建物は,本件建築条例が施行された時点において建築基準法3条2項のいう「現に建築・・の工事中の建築物」に該当するから,本件建築条例に係る改正条例の適用を受けず,本件建築条例の規定する高さ20メートルの制限に適合しない建物ではあるが,建築基準法に違反する建物ではない。
 しかしながら,建築基準法は,国民の生命,健康及び財産を保護するための建築物の構造等に関する「最低の基準」(同法1条)にすぎないから,本件建物が同法上の違法建築物に当たらないからといって,その適法性から直ちに私法上の適法性が導かれるものではなく,本件建物の建築により他人に与える被害と権利侵害の程度が大きく,これが受忍限度を超えるものであれば,建築基準法上適法とされる財産権の行使であっても,私法上違法と評価されることがある。この見地から,本件についてさらなる具体的な検討が必要となる。

2 原告らの権利侵害の有無についての判断


(1) 日照,圧迫感等(16頁〜19頁)
 いずれの原告についても,本件建物による日照被害が重大なものであるとまでは認められない。圧迫感については,法的保護の対象となり得るような客観性・明確性を備えるには至っていない。その他,交通事故の危険性の増大等については,いずれも抽象的な危険,不安にとどまり,具体的な権利侵害があったとは認められない。


(2) 景観の権利性(19頁〜31頁)

ア ある特定の地域において,地権者らが自己の土地利用に関して一定の自己規制を長期間にわたり継続してきた結果として、当該地域に独特の街並み(都市景観)が形成され,かつ,その特定の都市景観が,当該地域内に生活する者らの間のみならず,広く一般社会においても良好な景観であると認められることにより,前記の地権者らの所有する土地に付加価値を生み出している場合がある。
 このよう都市景観による付加価値は,自然的景観の享受などと異なり,特定の地域内の地権者らが,地権者相互の十分な理解と結束及び自己犠牲を伴う長期間の継続的な努力によって自ら作り出し,自らこれを享受するところにその特殊性がある。このような都市景観による付加価値を維持するためには,当該地域内の地権者全員が前記の基準を遵守する必要があり,仮に,地権者らのうち1人でもその基準を逸脱した建築物を建築して自己の利益のみを追求する土地利用に走ったならば,それまで統一的に構成されてきた当該景観は直ちに破壊され,他の全ての地権者らの前記の付加価値が奪われかねないという関係にあるから,当該地域内の地権者らは,自らの財産権の自由な行使を自制する負担を負う反面,他の地権者らに対して,同様の負担を求めることができなくてはならない。
 よって,いわゆる抽象的な環境権や景観権といったものが直ちに法律上の権利として認められないとしても,前記のように,特定の地域内において,当該地域内の地権者らによる土地利用の自己規制の継続により,相当の期間,ある特定の人工的な景観が保持され,社会通念上もその特定の景観が良好なものと認められ,地権者らの所有する土地に付加価値を生み出した場合には,地権者らは,その土地所有権から派生するものとして,形成された良好な景観を自ら維持する義務を負うとともにその維持を相互に求める利益(以下「景観利益」という。)を有するに至ったと解すべきであり,この景観利益は法的保譲に値し,これを侵害する行為は,一定の場合には不法行為に該当すると解するべきである。


イ 国立市大学通り周辺地域の成り立ちと,大学通りの景観を巡る地権者ら及び市民の運動並びに行政の景観政策の歴史・経緯等に照らすと,@一橋大学から江戸街道までの広幅かつ直線の道路,A直線道路の沿道に沿う並木,B直線道路の両側20メートルの奥行きの範囲(以下(「当該範囲」という。)に存在する周辺建築物が高さ20メートルで並ぶ並木を超えないものであること,の3点(以下「本件景観」という。)が,大学通りの景観を形成する要素となっている。
 そして,当該範囲内の土地の地権者らは,大学通りの本件景観を維持しようとして,自ら20メートルを超える建築物を建設しないという土地利用上の犠牲を払いながら,特定の人工的な景観である本件景観を約70年以上もの長期にわたって保持し,社会通念上も本件景観が良好なものと認められ,地権者らの所有する土地に付加価値を生み出した場合であると認められるから,地権者らは景観利益を有するに至ったといえるところ,以上の見地から,本件において景観利益を有すると認められるのは、当該範囲に土地を所有することが登記簿上明らかな原告○○○○,同○○○及び同○○○○ら3名(以下「原告○○ら3名」という。)である。


ウ 本件建物は,大学通りの並木に近接した位置に建設された,並木の高さの20メートルを逢かに超える地上43.65メートルの大型マンションであり,そのうち,大学通りに面した東側の1棟(以下「本件棟」という。)は,大学通りから20メートル以内という至近距離にあり,大学通りの並木から突出し,本件景観の重要な要素である並木の周辺の建築物がいずれも20メートルを超えないものであることと明らかに抵触し,本件景観を侵害するものである。


3 受忍限度についての判断(31頁〜53頁)
 被告明和地所の本件建物建築は,本件土地の所有権に基づく権利行使であるから,これにより原告○○ら3名が景観利益の侵害を受けているとしても,その程度が受忍限度を超えていると認められて初めて違法なものとなり,不法行為となる。
 受忍限度の範囲を超えるものであるか否かは,前記3名の原告ら(以下,受忍限度に関する項においては,単に「原告ら」という。)の被害の内容及び程度,地域性,被告明和地所の態度,法令違反の有無,被害回避可能性など,諸般の事情を総合考慮して検討すべきである。



(1) 原告らの被害の内容及び程度(32頁)
 前記2のとおりである。


(2) 地域性(本件土地の用途地域指定の意味)(32頁〜36頁)
 本件土地の従来の使用状況,大学通り付近の用途地域指定の形状,周辺建築物の状況,本件土地が大学通りの他の低層住居専用地域と一体となって都市景観形成重点地区侯補地に指定されていること等に照らすと,本件土地は,東京海上の計算センターがあったために第2種住居専用地域に指定され,その後,用途地域の基本的変更がされないまま経過したと考えるのが自然であり,本件土地が用途地域指定上第2種中高層住居専用地域であったからといって,直ちに高さ20メートルを超えるような建築物を許容ないし推奨していたとはいえない。本件建物のような周辺地域に類するもののない高層建築物の建築が許容ないし推奨されている土地でないことは明らかである。


(3) 被告明和地所態度及び被害回避可能性等(36頁〜53頁)

ア 被告明和地所の事前認識(47頁〜50頁)
 被告明和地所は,本件土地の購入にあたり,本件土地に大規模な高層マンションを建築しようとすれぱ,近隣住民から強い反対を受け,また,行政からも指導を受けることが必至であることを十分認識していながら,行政指導には法的な強制力がなく,公法上の高さ規制がない以上,近隣住民がいかに強固に反対しようとも、これを押し切って建築を強行してしまえば、何ら咎められる筋合いはないとの経営判断のもとに,本件土地を購入して本件建物を建築したこと,もともと,同被告としては公法上の規制の範囲で最大規模の高層マンションを建築することを意図しており,少なくとも建物の高さについては、大学通りの並木との調和について真剣に検討しようという意思はなく,したがって,大学通りの景観を守ろうとしている近隣住民らとの間で事前に真撃な協議を重ねる意思もなければ,これまで自らの財産権行使を制限して大学通りの景観形成に寄与してきた近隣地権者らの利益との調整を図るという意識もなく,これら近隣地権者ら被害を最小限度に止める可能性を検討することがなかったことが認められる。


イ 被害回避可能性(50頁〜51頁)
 本件土地の形状等に照らすと,本件土地を,ある程度大規模な集合住宅用地として利用することにもそれなりの合理性がある。そして,本件土地が約1万7700平方メートルにも及ぶほぼ整形の土地であり,大学通りに面している部分ぱかりでなく,かなりの奥行きがあることを考慮すると,本件土地の有効な利用と大学通りの景観の維持とは,決して両立し得ないものではない。
 したがって,被告明和地所が,当初から,大学通りの景観の形成と維持に歳月を重ねてきた地域及び住民の軌跡を正当に評価し,行政の指導の意図を真撃に受け止め,周辺住民らとも真面目に協議をし,ねばり強く計画の検討を重ねる意思を有していたならぱ,ある程度大規模なマンションであっても,大学通りの景観と相当程度調和し,近隣地権者らの景観利益を受忍限度を超えて侵害することのない建物の規模及び形状を模索することは可能であった。それにもかかわらず,被告明和地所は,公法上の規制に適合している限り協議の必要はないとの考えに基づいて本件建物の建築を強行したのであり,何ら実質的な被害回避の努力をしなかったというべきである。


ウ 被告明和地所の対応(51頁〜52頁)
 被告明和地所は,本件建物の計画,着工から完成に至るまでの間,行政から再三の指導を受けたにもかかわらず,これらの指導について,不明確で一貫性に欠けるとして,これを非難する態度に終始し,また,景観保護を訴える近隣住民らに対しては,公法上の規制を遵守する限り,その公法が悪法であっても,それさえ遵守すれぱ不法行為が成立することはなく,不法行為の成立を主張する者こそ法律を守らない者であると決めつけるという態度で臨んでいたことが認められる。そして,このように大学通りの景観を守ろうとする行政や住民らを敵視する姿勢をとり続ける一方で,本件土地に高層建築物を建てることによりそれまで保持されていた本件景観が破壊されることを十分認識しながら,自らは,本件景観の美しさを最大限にアピールし,本件景観を前面に押し出して本件マンションを販売したことは、いかに私企業といえども、社会的使命を忘れて自己の利益の追求のみに走る行為であるとの非難を免れない。


(3) 小括(53頁)
 以上によると,被告明和地所が本件建物を建築したことは,原告○○ら3名の景観利益を受忍限度を超えて侵害するものである。


4 原告○○ら3名の救済についての判断(53頁〜55頁)


(1) 本件建物の一部撤去
 不法行為による被害の救済は,金銭賠償の方法により行われるのが原則であるが、本件景観は原告○○ら3名を含む関係地権者らが地域住民や行政と連携しつつ長年にわたる努力の結果創り上げたものであり,その形成及び維持について複数の地権者らによる十分な理解と結束及びそれに基づく継続的な努力が要求されるという景観利益の特殊性と,本件建物による景観利益破壊の程度を総合考慮すると,本件建物のうち,少なくとも,大学通りに面した本件棟について高さ20メートルを超える部分を撤去しない限り,同原告らを含む関係地権者らがこれまで形成し維持してきた景観利益に対して受忍限度を超える侵害が持続し続けることになり,金銭賠償の方法によりその被害を救済することはできないというべきである。
 よって,本件棟のうち,地盤面から高さ20メートルを超える部分については,その撤去を命じる必要がある。


(2) 慰謝料
 被告明和地所に対し,本件棟の一部が撤去されるまでの間,原告○○ら3名の景観利益の侵害に対する慰謝料として,同原告らが請求する範囲で,1か月各1万円の慰謝料の支払を命じるのが相当である。

(3) 弁護士費用
原告○○○○ら3名の弁護士費用として,900万円の支払を命じるのが相当である。

(4) 被告三井建設及び同○○○○ら113名の責任
原告らは,上記(2)及び(3)の金銭賠償につき,被告三井建設及び被告○○○○ら113名の責任も主張しているが,同被告らに当該責任を負わせるのは相当ではない。

第4 結論
 以上によれぱ,原告○○○○ら3名について,請求の趣旨第1項のうち本件棟の地盤面から高さ20メートルを超える部分の撤去を求める部分,同第2項のうち被告明和地所に対して各原告につき月各1万円の支払を求める部分及び同第3項の請求のうち900万円の支払を求める部分は,いずれも理由があるから認容し,同原告らのその余の請求及びその他の原告らの請求はいずれも理由がないから棄却することとし,本件事案に鑑み仮執行の宣言は相当でないからこれを付さないこととして,主文のとおり判決する。
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