●2009年6月22日(月)

写真:( ダイアモンド・オンラインで連載する「週刊・上杉 隆」 より)
●見聞録226 世襲議員へ厳しい審判が下る衆院選挙
●今日の視点
いわゆる「小沢問題」で、この半年、政治資金なる言葉が踊っている。 直接、政治家に献金する企業も、献金を受け取る政治家も、「政治資金管理団体」をつくりそこを経由して授受ができるらしい。 献金の授受が合法的にいわば抜け道として制定されたのであろう。
次のステップとしてマスコミで言われているのが、すべて個人からの献金とするアメリカの例にならう方式。 企業優先、産業優先の日本の政治手法では、又あらたな抜け道が巧妙、且つ合法的に導入されるのは間違いない。
さて、この「政治資金」は、親から子へ引き継がれている。 多くの人が長年に亘り見落としていたのが不不思議でもあるが、相続税の対象とならないのである。
本稿で度々「大手不動産会社が、いきなり我がマンションからの景観を遮る様に隣地にマンション建設を始めた」と愚痴っているが、元はと言えば土地所有者が、相続税対策としてに売却した事に起因する。
家康が、欲しいぶんだけ馬で回った土地をくれてやろう・・という有名な話が残っているが、今も甲州街道沿いにその後裔の方々がそれぞれ広大な土地を持つ。 数ある土地の一つが、我がマンションの隣地の一角という事である。
ベランダから見渡せる地域のほとんどが、相続税対策として代が変わごとに売られていった様である。 固定資産税対策からだろうか、今も多くの土地を「農産地」として緑の空間を提供している。
ことほど左様に相続税対策は、屋敷・邸宅や緑地が限りなく無くしていく。 その是非は別としても、先祖から引き継いだ土地を手放さざるを得ない旧家の人々を悩ませる相続税対策に比べて、政治家が生きる手段の一つとしての政治活動で得た「地バン(後援組織)・カバン(金)カンバン(知名度)が、何の制約もなしに世襲され、「政治資金管理団体」を隠れ蓑に親から子へ引き継がれるのは、市民感情として実に許されない「特権」ではないだろうか。
特に政権与党の中に、この種の議員が多い。 今回、この事の是非がクローズアップされたのは、他ならぬ麻生首相の迷走がもたらしたと言えよう。 空気を読みすぎた臆病さが、裏目にでたという事だが、この100日以内に実施される衆院選挙では、多くの世襲議員がその洗礼を厳しく受けることになるのは間違いない。
その結果予想されるのは、最後の将軍「徳川慶喜」の様に、後世まで語り次がれるのは、奇しくも21世紀に入って長期政権の幕引き役として「4代も続いた世襲の首相」の名であろう。
さて、本稿一押しのジャーナリストとして、ベテランでは元日経の田勢康宏氏、若手では今回取り上げるNHK出身、フリーのジャーナリスト上杉骼≠ナある。 CS放送「朝日ニュースター」のキャスターとして毎週登場、ネットでは「ダイヤモンド・オンライン」で「週間・上杉驕vを発信、週刊誌で常連のライターをつとめるなど、正に今が旬のジャーナリストと言える。
今週の見聞録226便は上杉骼≠フ著作「世襲議員のからくり」から「世襲議員へ厳しい審判が下る衆院選挙」と題して、この問題を取り上げたい。
●今日の引用資料
上杉 驕F世襲議員のからくり
●見聞録226(1)二世首相による無責任な「職務放棄の連鎖」を即刻止めなければ、日本は破滅の淵へと突き進む
ここ数年、日本では想像もしなかった珍事が続いている。 相次ぐ政権の投げ出しである。 アジア、欧米、中東など、世界中の国では、リーダーたちが国民・国家のために自らの生命をも擲とうという迫力で施政を為している。 実際、そうした政治家たちの一部は、病死や暗殺、あるいは政変などでト。プの座を追われている。
海外に目を移す必要もない。 昭和初期の日本でも、自らの生命と引き換えに国政を担っているという覚悟を持った政治家は何人もいた。 内閣総理大臣の任期中に殺されたり、病に艶れたりした者は決して少なくない。
かつての日本の政治家には、挫折や困難に直面し、それを克服してのし上がってきた強さがあった。 その強さが高度成長期の日本の政治文化を支えてきたのだ。 吉田茂、石橋湛山、岸信介、池田勇人、佐藤栄作などの歴代総理は、官僚、新聞記者などの出身で、自分自身の力でトップに上り詰めた。
その象徴が、学歴も門閥もないところから、裸一貫でのし上がった田中角栄だった。 政治家としての個々人の評価はともかく、彼らが選挙で苦労し党や派閥などの権力闘争で切磋琢磨することで、為政者としての能力を身につけていったのは疑いない。
日本が「腹痛」や「あなたとは連う」という理由で、連続して首相を欠くようになったのはごく最近のことなのである。 異常事態はなおも続いている。 酔いどれ財務大臣はG7で世界中に醜態を洒した。その任命権者である首相は、漢字の読み間連いと朝令暮改のコメントで話題になった。
いつまでも解散に踏み切れないまま、目を覆うばかりの貧困な政治状況を作り出す首相に、国民は半ば呆れ果てている。 彼ら投げ出し宰相、無責任総理の共通点、それは「世襲議員」であることだ。 日本では今世紀に入ってから、世襲議員だけしか首相になっていない。 いったいなぜ、こうも世襲議員は増えてしまったのか。
筆者が、世襲議員の多さと、それが理由だと思われる政治の変質に気づいたのは、安倍内閣を取材しはじめたばかりの2006年のことだった。 首相のみならず、お友達内閣と鄭楡された「チーム安倍」の重要ポスト、官房長官と広報担当補佐官が二世議員で占められているばかりか、彼らから世間の感覚と乖離する「KY発言」が繰り返されたことがきっかけだ。 その傾向は迷走し続けた福田内閣にも引き継がれる。
安倍、福田内閣とも、閣僚ポストの半数近くが二世議員で占められていた。 麻生内閣になると、実に18人中12人と667%にも達する。
実は、そうした傾向は、第一次小泉内閣の発足時からあった。 本会議場のひな壇に並ぶ閣僚の顔ぶれを数え、自民党三役を眺め、野党第一党の民主党の幹部たちを思い出せば、改めて二世議員の多いことに驚く。 それはじつに異様な光景だった。 もはや世襲は、永田町では当然の文化であり、取材の材料には事欠かない状況になっている。
永田町の常識とはかけ離れているようにみえた小泉純一郎元首相ですら、次男を後継者に指名した。 これら二世議員が、日本の政治、ひいては日本社会全体から活力を奪う元凶との指摘かある。 たとえば、民主党の田嶋要は世襲の弊害を次のように断言する。
「能力:人格・識見の点てベストな人材が候補者として政治の場に出てくるチャンスを限りなく小さくし、政権の固定化に寄与し、日本の政治の質を、総理が平気で仕事を放り出す『三流』まで隠めたこと。 また『政治は特別な家柄の人々が担う仕事』という印象を国民に漠然と与え、その結果、『由らしむべし、知らしむべからず』の官僚政治とともに『雲の上』の権力に従順な日本国民のメンタリティを育んできた点も見逃せない」 世襲議員、あるいは二世議員とは、いわゆる「三バン」、すなわち地盤(後援会)、カバン(政治資金)、看板(知名度)を親族から引き継いだ議員を指す。
しかし、実は永田町では、かなり厳密に「世襲」と「二世」は区別して認識されている。「二世」と呼ばれるのはいいが、「世襲」と呼ばれることを嫌っている議員が多いのも興味深い。
たとえば、平沼赳夫の解釈ではこうなる。 「世襲とは、父や祖父等が国会議員で、其の地盤を引緒いだ者。 自分の曾祖父の代(平沼騏一郎。養父)は政治家だったが、選挙を一度も経験していない人であったので、世襲議員ではないと考える。 地盤はもともと皆無で、自ら努力して作った」
後援会などの集票マシーンを世襲しなかった議員は、苦労知らずの地盤を引き継いだ「世襲議員」とは一緒にされたくないということなのだろう。
鳩山由紀夫の解釈はこうだ。 「自分の場合は四世議員になるが、親の地盤を譲り受けたわけではないので、世襲議員には当たらない。 ただ、鳩山という知名度が当選に影響したことは間違いないと思う」
しかし、本書ではこの2つの言葉を厳密に使い分けることはしない。 残念ながら永田町以外の場所では、「世襲」も「二世」も大差ない存在だと認識されているからだ。 また、世襲の問題は後援会の継承のみにとどまらない。 最大の問題は、親の政治資金を子が無条件に相続できる仕組みが存在することにある。
本書ではこの問題を筆頭に、政治家が「三バン」を継承する際のからくりを、具体的かつ徹底的に検証していきたい。 日本の政治の現状は、このからくりを規制する手段を真剣に考えなくてはならないところまできている。 なによりも、二世首相による無責任な「職務放棄の連鎖」を即刻止めなければ、日本は破滅の淵へと突き進むだろう。
●上杉 隆(ウエスギ タカシ)
1968年福岡県生まれ。 都留文科大学卒業。 NHK報道局勤務、衆議院議員公設秘書、ニューヨーク・タイムズ東京支局取材記者などを経て、フリージャーナリストに。 ダイアモンド・オンラインで「週刊・上杉隆」を連載中。 『宰相不在 崩壊する政治とメディアを読み解く』『ジャーナリズム崩壊』『官邸崩壊 安倍政権迷走の一年』『小泉の勝利 メディアの敗北』など著書多数。 最新刊は『世襲議員のからくり』(文春新書)。
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