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sinojimu
社労士法人パートナーズ 代表  特定社会保険労務士/あっせん代理人  就業規則オンライン工房主宰  労働トラブル解決への道を模索し福岡市に生息中
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第2幕「労働時間管理と不払い残業」のポイント解説 [2007年09月20日(木) ]
労働問題に詳しくない方が台本だけ読んでもよくわかられないと思いますので、私が当日ポイント解説したものを公開します。

≪第2幕≫のポイント

●●労働時間管理と不払い残業

1. 労働基準監督官のチェックポイント

●どういうときに調査にくるのか
@定期監督  定期的、計画的に実施される調査
A申告監督  労働者の申告が原因で実施される調査 
       事前の連絡なく突然調査に入ることがよくある
B災害時監督・調査  労災が発生した場合に災害原因の究明や再発防止措置のため       に実施される調査

●労基署の調査はなにを見るのか
@ 1日8時間1週間40時間の労働時間の原則を守っているか
A 残業させている場合「時間外・休日労働協定届」(36協定)が提出されているか
B 残業代等割り増し賃金が支払われているか
C 賃金台帳に法定で定めれた事項が記載されているか(労働日数、労働時間、残業時間数等)
D 労働時間の管理を行なっているか
E フレックスタイム制、裁量労働制その他の変形労働時間制などが適正に運用されているか
F 法定で定められた労働条件は書面で交付されているか
G 10人以上の労働者がいる場合は就業規則が作成・提出されているか
H 健康診断を年1回以上実施しているか
I 安全衛生管理体制は法定どおりとなっているか など

●調査の流れ 労働者の申告による場合
申告 → 調査 → 是正勧告 → 是正報告 
従業員全員に不払い残業手当を2年分支給し、是正報告が適正であればOK
             → 是正勧告を無視  書類送検または逮捕もありえる

2.事業外みなし労働時間制の運用の注意点

第○○条(事業外みなし労働時間)
社外において業務に従事するため就業時間を算定しがたい者は、所定労働時間労働したものとみなす。

実際にはこのような規定があっても、一人で社外で営業活動を行い、外出先の決定が本人に任されており携帯電話での業務報告の義務もないケースを除き、労働時間が把握できないことはないものです。
また、帰社後の社内業務が日報作成だけならともかく、帰社しても関連する業務を行なうのが通常です。
就業規則や労使協定で定めることができるのは、社外で行なう業務に必要とされる時間をみなし労働時間とすることができるだけであり、社内での業務に要する時間を含めてみなし労働時間とすることはできないことになっています。

ですから、営業に従事する従業員には営業手当などの名称で固定で支給し、賃金規程で「営業手当は時間外労働割増賃金」であることを明確にしておくことが重要です。

3.歩合給制をとっている場合の時間外労働割増賃金

売上歩合給は、すでにその役割を終えています。数字だけで給与を増減させていくことの弊害は、いろいろな企業のケースで証明済みです。
短期的な雇用であって、瞬間的に業績を上げたい、または本人の適性を見極めた上で契約社員など特定の社員に歩合給を導入するのはいいかもしれませんが、社員の士気は長続きしません。また、良い人材を採用できません。

それは、社員は、本当は、「給料」の高さだけを動機にして仕事をしているわけではないからです。歩合給を取り入れている会社はそのあたりをしっかり考え直す必要があります。

完全歩合給だからといって、残業手当を支給しない場合は労基法に抵触します。あらかじめ定められた方式に基づいて計算した歩合給額に、次の割増賃金をプラスして支給しなければなりません、

  当月の歩合給÷総労働時間×0.25×時間外労働時間数

この決まりがあるのはなぜでしょうか。歩合給であって成果に応じて高い報酬を支給しており、本人も納得していれば割増賃金など必要ないではないか、とお考えですか。
歩合給は従業員に長時間労働を促進する要因があるからです。
逆に会社に割増賃金支払を義務づけることで所定時間内に仕事を終わらせるように仕向ける動機付けとなるからです。


4.過重労働は安全配慮義務違反に問われ、多額の損害賠償責任を負うことに。

長時間労働による脳血管疾病については従来から労災が 認められていましたが、過重労働に基づくストレス起因の疾患についても労働災害と認められるようになった。
その根拠は、使用者側の安全配慮義務にある。
漠然と長時間労働を継続させるような労務管理は、安全配慮義務違反となる可能性が高い。
では、どのくらいの長時間労働を過重労働というのだろうか。
厚生労働省は、平成14年2月12日に通達でそのおおよその基準を示している。
残業時間については、できるだけ月45時間以内を遵守させる。
月100時間又は2ヶ月ないし6ヶ月間の1ヶ月平均の時間外労働が80時間を越えると認められる場合、 産業医等の助言指導等の措置をとる。
1ヶ月平均80時間とは、1日8時間1ヶ月24日の労働日があったと仮定すると、
1 日あたり、2時間の残業で、48時間となる。
しかも、1日8時間労働の会社であれば、所定労働日数は21日乃至22日が限度であるから、
24ー21日=3日は、休日労働を行なっていることになり、
3日×8時間=24時間を48時間に加算すると、72時間となる。
つまり、毎日2〜3時間の残業と休日出勤を月に3日を継続していれば、安全配慮義務違反が疑われる。
1 日10時間の実労働時間が毎日であり、1ヶ月に休日が6日程度しかない会社は
産業医等の助言を受けていない場合は、早急に労働時間の短縮を図るべきだろう。
この基準は管理者や、みなし労働時間制の従業員も含んでいる。
平成18年4月1日から労働安全衛生法が改正され、
月100時間を越える時間外労働を行なった労働者の申し出があれば、医師の面接指導を行なわせることが法律上の義務となった。

5.労働基準監督署の調査よりももっと怖い、不払い残業手当請求事件

労基署の調査は、事業所に対する行政指導であり是正勧告であり、間接的に全労働者の利益となりますが、労働者は同時併行で内容証明郵便で不払い残業手当の請求をしてくることがあります。
これは、法的措置を前提にした請求であり、その多くは、労働局へのあっせんや、裁判所への提訴を前提としています。
労働局へのあっせんは、訴訟へ至るまでの前段階として位置づけられ、円満な和解を目指すもので、喧嘩となる訴訟と異なりソフトな解決手段として活用が増加しており、特定社会保険労務士だけが本人代理できるものです。
簡易裁判所への少額訴訟は60万円まで、本人だけで簡単に提訴できます。
60万円を超える場合は通常訴訟となりますが、140万円までは司法書士が代理することができます。一部の司法書士は不払い残業手当請求訴訟の代理業務を積極的に行なっています。
訴訟に至った場合に最も怖いのは、本人の請求により裁判所が、不払い残業手当と同額の付加金の支払を命じることができる点です。(労働基準法第113条)
過去2年間の未払い賃金の2倍を支払うことになりますので注意が必要です。
Posted at 20:16 | 労働法関連 | この記事のURL
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第2幕 「労働時間管理と不払い残業」 [2007年09月20日(木) ]
昨日、中小企業家同友会の9月例会で、演劇をやってきました。
2ヶ月間ずっと企画し、台本を練り、配役を決め、練習を重ね、やっと昨日終わりました。
演題は、
経営者のための、労務トラブル再現劇「放っておくと大変なことになりますよ!」

見てくださった皆さんからの評価は、「たいへんわかりやすくためになった。」「同友会の例会として画期的な内容だった」と、おほめの言葉がズラリ!

私の独断と偏見で引っ張ってきたこの企画に、主旨を理解し、立派に演じられた出演者(会員さん)の皆様や、台本の作成等に協力いただいた2人の社労士さんに、あらためて感謝いたします。

第1幕から第5幕までありましたが、私が台本を担当した第2幕と第3幕のシナリオを全文このブログで公開します。
まずは今日は、第2幕のご紹介です。

≪第2幕≫

●●労働時間管理と不払い残業

総務課の城所君がひとりでつぶやいている。
城所君「毎日毎日残業ばかりで疲れるなあ。給料は安いし、こんな会社もう辞めようかなあ。でも俺の能力じゃ、他の会社はなかなか雇ってくれんやろうな。しょうんなか。もうちょっと我慢してがんばるか!」
そこに柴原課長が現れる。
柴原課長「おい、城所君。なんばぶつぶつ言いようとか。給料計算を今日中に仕上げないとあさっての支給日に間に合わんぞ。」
城所君「あ、課長。お疲れ様です! 営業課からの個人別売上成績のデータがまだ来ないので計算ができないんですよ。課長からも川崎部長に催促してくれませんか」
柴原課長「そうか。川崎部長はいつも忙しいからな。でもデータは約束どおり支給日の3日前までには総務に提出することになってる。よし、私が電話してあげよう。」
柴原課長、内線電話をかける。
柴原課長「あ、川崎部長ですか。柴原です。あのぉ、個人別の売上データをですね、何時頃になりますか。あ、そうですか。6時ですね。はいわかりました。」
城所君「いつも営業はこうなんだから。そのせいで僕が遅くまで残業しないといけない。きのうは社会保険の算定基礎届で夜の11時までかかったし、今日は8時には帰りたいよお」

(翌日)

城所君が席を立って課長の席にずかずかと歩み寄る。
城所君「課長。お話があります。」
柴原課長「なんやね、急に」
城所君「きのうは営業からのデータが来たのが8時でしたので給料計算が終わったのが10時でした。おとといも11時まで会社にいました。私の給料は課長もご存知でしょう。基本給18万。残業手当は月20時間固定で26,000円。合計206,000円です。」
柴原課長「だからなんだ。」
城所君「せめて実際の残業時間に応じて残業手当を支給してもらえませんか。うちの会社はタイムカードはないし、出勤簿にはんこを押すだけです。でも私は毎日手帳に出社時刻と退社時刻をメモしています。もうつけはじめて2年になります。」
柴原課長「何を言っているんだ。そんなことが社長の耳に入ってみろ。怒鳴られるどころか即刻クビと言われるぞ。それに君だって、自分のミスをカバーするために遅くまでかかっていることもあるだろう。おとといの社会保険の算定基礎届だって、もう何年もやっているのにいまだに参考書に頼りながらやってるから遅くなるんだ。会社というものはだな、少々不満なことがあってもじっと耐えて辛抱していれば、私みたいに課長にまではなれるんだ。君の働きぶりは社長も専務も良くわかっておられるよ。ミスさえ少なくなれば、来年の昇給査定のときには君を係長に推薦しようと考えていたところだ」
城所君「そうですか。無理ですか」
と、しぶしぶ席にもどる城所君

(数日後)

柴原課長と城所君が席で仕事をしている。そこに労働基準監督官2人が現れる。
古田労働基準監督官「株式会社イースタンホークスさんの事務所ですね。私はこういう者です。社長さんもしくは労務の責任者の方はおられますか」
柴原課長「社長はただいま外出中です。私は総務課長の柴原と申します。御用件はなにか?」
古田労働基準監督官「出勤簿もしくはタイムカード、それに賃金台帳と労働者名簿をみせていただけますか」
柴原課長、専務に内線電話をする。
柴原課長「専務ですか。いま労働基準監督署が突然こちらに見えまして。あ、そうですか。わかりました。私の方で対応いたします」
柴原課長「どうぞこちらへ。しかしいきなり、何のためにお見えになったのでしょうか」
古田労働基準監督官「実は、御社の従業員さんから申告がございまして。労働時間の管理を適正になさっておられるかどうか、それと賃金との整合性を調査するために来ました」
宮本労働基準監督官 うなずく。
柴原課長「出勤簿はこちらです。賃金台帳と労働者名簿は、あ、城所君こちらへ持ってきてくれたまえ」
古田労働基準監督官「出勤簿には時刻の記入がありませんね。」
柴原課長「所定労働時間が9時から6時の8時間ですので、時刻の記入がないときは8時間労働ということです。」
古田労働基準監督官「就業規則を見せていただけますか」
柴原課長「はい、こちらです」
古田労働基準監督官「営業課は毎日8時間労働ということですか? 営業の方はたしかに外出が多いので、8時間の事業場外みなし労働時間ということでしょうが、帰社してから事務作業を行っておられるのではないですか。」
柴原課長「いや、それは、ないと思いますが」
古田労働基準監督官「賃金台帳を見てみますと、営業手当が歩合制のようですね。歩合給の場合でも労働時間管理を行なう必要がありまして、1日8時間を越える残業があった場合1ヶ月の総労働時間で歩合給の金額を割って1時間単価の0.25倍に時間外労働時間数を掛けて残業手当を支給しなければなりません。もちろん、基本給の時間あたり単価の1.25倍に時間外労働時間数を掛けた金額を加算する必要があります。」
宮本労働基準監督官 うなずく。
柴原課長「営業はみなし労働時間を採用すると就業規則にも書いています」
古田労働基準監督官「実は、申告してきた御社の従業員さんから、毎日会社に帰社してから営業会議とか提案書作成とかで夜9時までの残業がザラだという申し出が来ております。営業の方たちの実際の労働時間を調査したいと思います。パソコンの電源を切った時刻を調べさせてください」
柴原課長「だから営業は事業場外みなし時間制だと言っているじゃないですか」
古田労働基準監督官「事業外みなしとは、会社の外で業務に従事しているために労働時間の算定が困難な場合に所定労働時間働いたとみなしていいといい制度です。ですから社内業務で労働時間の把握が可能な業務時間は別途計算し、みなし労働時間数の8時間に加算しなければなりません。御社の場合、労働時間の記録が全くなされておられないようです。傾向といたしまして長時間労働の職場ほど労働時間の管理がずさんとなっています。不払い残業の温床となるとともに過重労働が重なると社員さんたちの心身の健康を害しかねません。従業員さんたちは自分で出社時刻と退社時刻を手帳などにメモしておられることがあります。会社が正しい労働時間の記録をお見せできない場合、客観的な証拠としてパソコンやサーバのログインログアウト時刻や、従業員さんたちの手帳のメモを採用することがあります。」
柴原課長「そういえば、そうなんですよね」
と、がっくりと肩を落す。

ここで「解説」が入る。

篠塚が出てきて解説を行う。(約2分)

篠塚「柴原課長。営業でも労働時間の管理をしなければならないことがわかりましたか」
柴原課長「はい。実は私はわかっていました。しかし社長に法律的なことを言うとああいう人ですから何を言われるかわかりませんので黙っていました。でもこれからは出社時刻と退社時刻を出勤簿に記入させるようにします。社長にそうしなければいけない時代なんですと説得します。しかしそうしますと時間外手当が膨大な金額になりますので到底うちの会社では人件費倒産になりかねません。時間外労働を減らすように全社的に対策を考える必要があると思います。また、営業手当が時間外労働手当の代わりであるという規定に就業規則を変更して、歩合給についても見直ししなければいけないと思います」
篠塚「城所さん、できるだけ定時に仕事を終えるように、またはせめて1ヶ月20時間の残業時間におさまるように、仕事の段取りや中身を見直してみてはいかがでしょうか。それには課長の手助けも必要と思います」
柴原課長、城所君「はい。わかりました」
                              了
Posted at 19:54 | 労働法関連 | この記事のURL
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