労働問題に詳しくない方が台本だけ読んでもよくわかられないと思いますので、私が当日ポイント解説したものを公開します。
≪第2幕≫のポイント
●●労働時間管理と不払い残業
1. 労働基準監督官のチェックポイント
●どういうときに調査にくるのか
@定期監督 定期的、計画的に実施される調査
A申告監督 労働者の申告が原因で実施される調査
事前の連絡なく突然調査に入ることがよくある
B災害時監督・調査 労災が発生した場合に災害原因の究明や再発防止措置のため に実施される調査
●労基署の調査はなにを見るのか
@ 1日8時間1週間40時間の労働時間の原則を守っているか
A 残業させている場合「時間外・休日労働協定届」(36協定)が提出されているか
B 残業代等割り増し賃金が支払われているか
C 賃金台帳に法定で定めれた事項が記載されているか(労働日数、労働時間、残業時間数等)
D 労働時間の管理を行なっているか
E フレックスタイム制、裁量労働制その他の変形労働時間制などが適正に運用されているか
F 法定で定められた労働条件は書面で交付されているか
G 10人以上の労働者がいる場合は就業規則が作成・提出されているか
H 健康診断を年1回以上実施しているか
I 安全衛生管理体制は法定どおりとなっているか など
●調査の流れ 労働者の申告による場合
申告 → 調査 → 是正勧告 → 是正報告
従業員全員に不払い残業手当を2年分支給し、是正報告が適正であればOK
→ 是正勧告を無視 書類送検または逮捕もありえる
2.事業外みなし労働時間制の運用の注意点
第○○条(事業外みなし労働時間)
社外において業務に従事するため就業時間を算定しがたい者は、所定労働時間労働したものとみなす。
実際にはこのような規定があっても、一人で社外で営業活動を行い、外出先の決定が本人に任されており携帯電話での業務報告の義務もないケースを除き、労働時間が把握できないことはないものです。
また、帰社後の社内業務が日報作成だけならともかく、帰社しても関連する業務を行なうのが通常です。
就業規則や労使協定で定めることができるのは、社外で行なう業務に必要とされる時間をみなし労働時間とすることができるだけであり、社内での業務に要する時間を含めてみなし労働時間とすることはできないことになっています。
ですから、営業に従事する従業員には営業手当などの名称で固定で支給し、賃金規程で「営業手当は時間外労働割増賃金」であることを明確にしておくことが重要です。
3.歩合給制をとっている場合の時間外労働割増賃金
売上歩合給は、すでにその役割を終えています。数字だけで給与を増減させていくことの弊害は、いろいろな企業のケースで証明済みです。
短期的な雇用であって、瞬間的に業績を上げたい、または本人の適性を見極めた上で契約社員など特定の社員に歩合給を導入するのはいいかもしれませんが、社員の士気は長続きしません。また、良い人材を採用できません。
それは、社員は、本当は、「給料」の高さだけを動機にして仕事をしているわけではないからです。歩合給を取り入れている会社はそのあたりをしっかり考え直す必要があります。
完全歩合給だからといって、残業手当を支給しない場合は労基法に抵触します。あらかじめ定められた方式に基づいて計算した歩合給額に、次の割増賃金をプラスして支給しなければなりません、
当月の歩合給÷総労働時間×0.25×時間外労働時間数
この決まりがあるのはなぜでしょうか。歩合給であって成果に応じて高い報酬を支給しており、本人も納得していれば割増賃金など必要ないではないか、とお考えですか。
歩合給は従業員に長時間労働を促進する要因があるからです。
逆に会社に割増賃金支払を義務づけることで所定時間内に仕事を終わらせるように仕向ける動機付けとなるからです。
4.過重労働は安全配慮義務違反に問われ、多額の損害賠償責任を負うことに。
長時間労働による脳血管疾病については従来から労災が 認められていましたが、過重労働に基づくストレス起因の疾患についても労働災害と認められるようになった。
その根拠は、使用者側の安全配慮義務にある。
漠然と長時間労働を継続させるような労務管理は、安全配慮義務違反となる可能性が高い。
では、どのくらいの長時間労働を過重労働というのだろうか。
厚生労働省は、平成14年2月12日に通達でそのおおよその基準を示している。
残業時間については、できるだけ月45時間以内を遵守させる。
月100時間又は2ヶ月ないし6ヶ月間の1ヶ月平均の時間外労働が80時間を越えると認められる場合、 産業医等の助言指導等の措置をとる。
1ヶ月平均80時間とは、1日8時間1ヶ月24日の労働日があったと仮定すると、
1 日あたり、2時間の残業で、48時間となる。
しかも、1日8時間労働の会社であれば、所定労働日数は21日乃至22日が限度であるから、
24ー21日=3日は、休日労働を行なっていることになり、
3日×8時間=24時間を48時間に加算すると、72時間となる。
つまり、毎日2〜3時間の残業と休日出勤を月に3日を継続していれば、安全配慮義務違反が疑われる。
1 日10時間の実労働時間が毎日であり、1ヶ月に休日が6日程度しかない会社は
産業医等の助言を受けていない場合は、早急に労働時間の短縮を図るべきだろう。
この基準は管理者や、みなし労働時間制の従業員も含んでいる。
平成18年4月1日から労働安全衛生法が改正され、
月100時間を越える時間外労働を行なった労働者の申し出があれば、医師の面接指導を行なわせることが法律上の義務となった。
5.労働基準監督署の調査よりももっと怖い、不払い残業手当請求事件
労基署の調査は、事業所に対する行政指導であり是正勧告であり、間接的に全労働者の利益となりますが、労働者は同時併行で内容証明郵便で不払い残業手当の請求をしてくることがあります。
これは、法的措置を前提にした請求であり、その多くは、労働局へのあっせんや、裁判所への提訴を前提としています。
労働局へのあっせんは、訴訟へ至るまでの前段階として位置づけられ、円満な和解を目指すもので、喧嘩となる訴訟と異なりソフトな解決手段として活用が増加しており、特定社会保険労務士だけが本人代理できるものです。
簡易裁判所への少額訴訟は60万円まで、本人だけで簡単に提訴できます。
60万円を超える場合は通常訴訟となりますが、140万円までは司法書士が代理することができます。一部の司法書士は不払い残業手当請求訴訟の代理業務を積極的に行なっています。
訴訟に至った場合に最も怖いのは、本人の請求により裁判所が、不払い残業手当と同額の付加金の支払を命じることができる点です。(労働基準法第113条)
過去2年間の未払い賃金の2倍を支払うことになりますので注意が必要です。
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