投稿者:Ash
「目的と目標」。一見、似たようなことばに見えます。日常の会話では、混同して使ってもさほど支障がない場合も多いです。でも、ビジネス的にも、プライベートでの自己管理的にも、ちゃんと意味を分けて使うほうがいいですね。きたる2011年の目標をあれこれと考えている人も多いでしょう。ここはひとつ、目的と目標の正しい理解をしておきましょう。
というわけで、よく使われるビジネス訓話を引用します。
三人の石工が、石を削っていた。通りがかった侍が「なにをやっているのか」と三人に尋ねた。
一番目の石工は、「見てわからんかね。石を削っているんで」と答えた。
二番目の石工は、「おまんまを稼いでいるのさ。これが俺の仕事なんでね」。
三番目の石工は、訊かれると顔を輝かせてこう答えた。
「ここにお城が建つんだよ。おれはその石垣に使う石を削ってるのさ。おれはいま、末代まで残る仕事をしてるんだ」
ここで普通は、次のような解説が入ります。
三人の目標は、同じである。石切り場から運ばれてきた石を、石垣に組める形に加工することである。しかし、三人の目的は異なる。一番目の石工には目的はなく、石を削るのは石が来るから。石が来なくなったら、その日は帰ってしまう。二番目の石工は、生活費を稼ぐという目的で働いている。石が来るのが途切れたら、そこらの片付けとか石運びの手伝いなどをして、その日の賃金が下がらないようにする。三番目の石工の目的は、立派な城が建つこと、自分がそれに貢献する満足を得ることである。自分で見出した価値観を持つ者は強い…。
目的と目標の違い、だいたいよろしいでしょうか。きらきら光る星が目的、星へと続く階段の一段一段が目標、というわけですね。
ところがとても惜しいことに、たいていの説明が、ここまでで終わっています。
違うんです。話は最後まで聞かなくちゃ。多くの人が知らない、この話の続きを紹介します。
侍が三人の元を離れると、一番目の石工はすぐに侍のあとをつけ始めた。適当な場所にさしかかったところで、石工は侍に襲いかかり、侍は手もなくやられた。石工は遺骸を谷へ落としてこう言った。「やつが敵領の間者だろうがただの詮索好きだろうが、俺が殿に御仕えし御命をお守りするという大儀の前には関係がない」
同じころ、二番目の石工は、三番目の石工の亡骸を始末していた。城が建つ話自体は、ありふれた公然の秘密かもしれない。しかし、石工や人夫の頭数を数えれば、城の規模や工期が推測できる。部材の置き場を見ていけば、城の構造がわかる。どんなに小さな、どんなに一般的な話と思っても、職務上知り得た情報には一定の注意を払うべきなのである。どこの馬の骨ともわからぬ他人になんでも軽々しく口走ってしまう人間は、この先どんな機密をもらさないとも限らない。危機管理は早めの手当てがいいのだ。「悪く思うな。これが俺の仕事なんでね」
命を落としてしまった二人はなにがいけなかったのでしょうか。目標が先走り、目的に正しく適っていなかったのかもしれません。また、目的の捉えかたが曖昧になってしまい、正しい行動につながっていなかったのかもしれません。
いずれにせよ、人はどのような目的を秘めてその時々を生きているのか、じつは誰にもわからない。人を安易に判断するのは禁物、ということですね。
では、きたる2011年も、目的に正しく沿った目標をもって、いい一年にいたしましょう。