例えば会社の経営者が、「社員の興味や関心は金銭的報酬と昇進・昇格だ」、「お金と地位をちらつかせれば社員は頑張るものだ」、と思い込んでいるとします。人は自分の考えをベース(前提)に手段を考えますから、その経営者の導き出す手段は、「頑張って結果を出した人には多くの報酬、結果を出さなかった人には少ない報酬を用意しよう。そうすれば、多くの報酬を得ようとして頑張るに違いない。よし、成果報酬制度を導入しよう。」というものになることが予想できます。実際はここまで単純ではありませんが、分かりやすい例として捕らえてください。
◎
メンタルブロックは「あなたが思いつく手段」を制限します。
◎ 手段を間違えれば、「望んでいる結果」を得ることができません。
メンタルブロックを解除する方法については前にも書きましたが、結論付けをする前に、
◎ 「本当にそうなの?」
◎ 「他にもっといい方法はないの?」
◎ 「それって思い込みじゃあないの?」
◎ 「それは目的じゃなくて手段だよね?」
◎ 「その前提、間違ってない?」
と自分に問いかけてみることが重要です。
それでは、ケーススタディーをしてみましょう。
前述の経営者のもつ、「社員の興味や関心は金銭的報酬と昇進・昇格だ」という前提は正しいでしょうか?
本当にそれだけなの? もっと他に興味や関心の対象はないの? このように問いかけてみます。「自分は正しい」と自分の中で完結させるべきではありません。色々な人との積極的な関わり合いの中で、彼/彼女らの価値観に触れ、できるだけたくさんの可能性をテーブルの上に広げて、その中から「より正しい前提」を選択するべきなのです。
果たして、社員の興味や関心はお金や昇格・昇進だけでなく、もっと多岐にわたっていることがわかります。例えば、このようなものです。
◎ 自分自身に関すること:
楽しく仕事をしたい、達成感を得られる仕事をしたい、新しいことを学びたい、
自分の成長を実感したい、もっと大きな責任を持ちたい
◎ 人との関係に関すること:
人の役に立ちたい、人に期待されたい、人に感謝されたい、人にほめられたい、
人に羨ましいと思われたい、尊敬できる人と一緒に働きたい
実際に部下とコミュニケーションをとってみると、部下の価値観に触れることができ、新たな発見があるでしょう。もちろん、相手の言葉を反応的に聞くのではなく、言葉の意図やその背後にある感情に気を配りながら聴かなければなりません。この行為は、自分の感性を豊かにしてくれます。ここでのコミュニケーションの主目的は、色々な人の価値観に触れて、自分の思い込みを解除することにあります。たとえ部下の意見に共感できなくても、指導しようとして自分の意見を押し付けてはなりません。「手段の目的化」は避けるよう心がけましょう。
さて、社員の「興味」や「関心」は金銭的報酬と昇進昇格だ、という前提はくずれました。新しい前提を次のように設定してみました。
◎ 社員の興味や関心は多岐にわたっており、人によってやりがいを感じる領域は違う。
もしこの前提が正しいのだとすると、一人ひとりの価値観を理解して、その人の「興味」や「関心」を刺激するようなお願いの仕方をしなければならないことがわかります。十把一絡(じゅっぱひとからげ)にはできません。
人の役に立ちたいと思っている人には、「その仕事がいかに人を幸せにする仕事か」というポイントをリアルに説明し、人に期待されたいと思っている人には、「あなたが、どれほどその人に期待しているか」をできるだけ具体的に説明するという方法が効果的でしょう。
とにかく、正しい結果を得るためには正しい手段(プロセス)が必須ですし、正しい手段を選択するためには正しい前提が必要となるということです。
そんなことは当たり前だ! と言われてしまいそうですね。でも、その当たり前のことがなかなかできないのが現実ではないでしょうか。「その前提、間違ってない?」と自分に問いかけてみましょう。
やま