投稿者:Ash
読書をするのに、栞(しおり:ブックマーク)の存在は重要である。買ってきた本を時が経つのも忘れて読み耽ったとしても、初めから終わりまで一気に読み通せることは稀で、途中何度かは椅子を立ち、本をそこへ置くことになる。栞の仕事が始まるのは、このときだ。
本の外の世界から、何らかの呼び出しがかかってしまった読者に代わり、中の世界の時間経過をしばし止めておくのが、栞の唯一最大の役目だ。本のページに栞を挟むことは、それまで読み進めてきた思いをそこへ預ける行為であり、読み手にとって一冊の本の読了に次ぐ至福の瞬間でもある。
ドッグイヤーといって、ページの角を折ることで、どこまで読んだかの目印とするやり方もあるが、私はこれをしない。本に痕(あと)をつけるのを好まないのである。ドッグイヤーの習慣をお持ちの方は、是非ご自分の本だけに留めていただきたい。他人に借りたり、図書館から借りてきた本などでやってはいけない。ドッグイヤーも読書の作法のひとつであるが、一度つけた折り目は元に戻せないという性質上、これを好まない読書家もいることを忘れてはならない。
なお、本を見開きのままその場に伏せるのは、ただの無精なのであって、読書の作法からは外れたもののように思う。私は、たまにこれをやる。
代表的な栞の方法を挙げると、およそ次のようになると思われる。
ページとページの間(:のど)に、紙・樹脂・金属などの小片を挟む。ページの端(上または横)に、クリップ状の小片を付ける。本に備えられた「栞紐」を使う。本のジャケット(カバー)や帯の折り返し部分を挟む。
これら以外にもいくつかブックマーキングの方法はあると思うが、一般的なのは上の四つであろう。ページキーパーと呼ばれる、見開き箇所を常時指差してくれるような工夫がなされた製品もあるが、栞とは区別して考えたい。
この内、紙などの小片を挟むやり方は、栞の相当の割合を占めるに違いない。なぜなら、厳密に「栞」と呼べるものでなくとも、大きさと厚さが適当ならば代用が効くからである。挟むことができれば何でもいいのだ。出版社のアンケート葉書、レシート、映画やコンサートの半券、名刺、磁気カード、定規、封筒、ポチ袋、写真、紙幣、紙やリボンなどの切れ端全般、CDの背帯、ワインのエチケット、シガーバンド、薬の取説、ギターのピック、古典的なところで押し花、等々、挙げればきりがない。
もちろん、代用品でなく、良くデザインされた製品を買い求めて使うのも、お洒落である。しかし、忘れたくないのは、主役は飽くまでも本であるということだ。栞は、読書を手伝う脇役に徹した姿が、健気で美しい。本を開く度にそのデザインに見惚れてしまったり、持っているのが嬉しくなる貴金属のような栞も結構なのだが、自分の読書への思いを超えてしまわないものにするのが粋というものだろう。
"Why pay a dollar for a bookmark? Why not use the dollar for a bookmark?"
(なんだって栞ひとつに1ドルも払う? その1ドル札を栞にすりゃよかろうに!)
Fred Stoller(米コメディアン)のネタより
コメントありがとうございます。
30年間の、メンバーとファンの思いが詰まった栞ですね。
再びページが開かれる日まで、栞にはいい仕事をしていて欲しいものです。
女優の貫地谷しほりさんの名は、「栞のテーマ」から採ったものだと、最近読みました。
思わず隔世を感じずにはいられません…。
また、コメントお待ちしております。