投稿者:Ash
先日、IT関係の展示会に行きましてね。
だだっ広い会場に、1,000社を超える出展者のブースがぎっしりと詰まってて、その間を下町の路地のように通路が走っているわけです。そこを、縁日のような賑わいで大量の人々がぞろぞろと歩き、目についた出展者にアクセスしています。まあ、展示会とはそうしたものですが、行った経験のない読者もいらっしゃることと思い、描写してみました。
出展者のほとんどは、日本企業や日本に代理店を持つ比較的大きな外国企業なのですが、会場の中には雰囲気の一風変わった小さな通りがありました。
その通りには、アジア系の外国企業ばかりが集まっていたのです。
通りに踏み入れると、周囲では見学客を相手に、出展者のスタッフがなにやら説明をしていますが…、飛び交っているのは日本語と英語と、そうでないアジアの言語たち…。
アジアのことばについて勉強不足の私には、朝鮮・韓国語か中国語でなかったら、すみません、識別できません。
でも、勇気を出してブースのひとつを覗いてみます。すると、表に立っているスタッフが猛然と話しかけてきます。
英語です。インドやバングラデシュの方々は、本当に英語が上手です。特定のデバイス用のアプリケーションを提供している会社でした。適当に聞いて引き上げます。
次のブース。少年と呼んでもいいようなスタッフが、ひとりでブースを守っています。
「どーぞ」
と日本語で言い、パンフレットを渡してくれるので、
「こちらは何の会社ですか」
すると、
「ウィーアー、オーバーシーズ、カンパニー」(海外からの出展なんです)
おっ、急に英語かい? そこで、
「What do you produce, for example?」(例えば何を作ってますか?)
と私。すると…
しばらく間があった後、彼が発したのは、
「ウィーアー、オーバーシーズ、カンパニー…」
「are」は R の音が響かず、「overseas」には V が聞こえず、冠詞もない、たしかにはじめから英語話者の英語ではなかったのでした。
しかし、そのときの私の強烈な印象は、「アジア系、たくましい!」だったのです。
日本語も英語も、おそらくワンフレーズだけをインスタントに教え込まれて、彼は開催期間のあいだ自分のブースを守って、そこに立っていたのでしょう。40年くらい前にあった、紙製の下敷きのような作りの、よれよれのパンフレットを配るためだけに…。
ある意味、究極の営業、究極のコミュニケーションといえますね。
たぶん本国政府の援助も少しはあるのでしょうが、少々の不利な条件をものともせず、日本に顧客を作りに来るこのハングリーさに、私は驚嘆せざるを得ませんでした。
彼の会社が、私たちのお客さまとなる日も、そう遠くないかもしれません。