【報告】CSRセミナー

2007年12月10日(月)
12月3日に開催した「CSRセミナー」の概要を報告します。



CSR(企業の社会貢献)が声高に叫ばれている。最近は中国でもCSRの重要性が認識され、企業が中国で事業展開する上で無視できない要素となりつつある。ジェトロ上海センターでは、12月3日に独立行政法人国際交流基金北京日本文化センターの藤田安彦所長をお招きし「日本企業の社会貢献活動(CSR)」というセミナーを開催した。同基金では2007年1月から3月にかけて、中国日本商会と協力して中国全土の日系企業の社会貢献活動に係るアンケート調査を行っている。講演ではこのアンケート結果にも触れた。藤田所長は最後に「欧米企業に比べてやはり日系企業は中国人に好かれているとはいえない。この現状を打破し中国人に好かれる企業になるための手段としてCSRを活用してみてはいかがか。」と述べた。講演の概要は次のとおり。

中国におけるCSRの動き
CSRとは、企業の活動プロセスに、法律尊守にとどまらず、社会的な公正性、倫理性、環境などへの配慮に積極的に取り組むこと、と定義されるのが一般だ。中国でも最近CSRの動きが活発である。学者の間ではCSRに関する研究が行われ始めている。またメディアが中心となって、社会貢献活動に関係する企業表彰を幅広く行っている。例えば、「公民最優秀企業トップ10」、「チャリティ活動企業トップ10」、「最尊敬企業トップ10」の表彰などである。経済界では、中国企業連合会により「中国企業CSR推奨基準及びベストプラクティス集」というガイドラインが公表されている。そしてこういった社会的な動きだけではなく政府も、商務部が「CSR報告書作成に関するガイドライン」を公表するなど、実践から評価の段階までCSRを積極的に推進している。そしてこのようなブームにつられて市民の企業を見る目もだんだん厳しくなっており、グローバルな感覚を持った市民による企業の取捨選択が始まりつつある。このような状況の中、今後中国でのCSRの重要性が増すことは間違いないだろう。
 
異文化交流の重要性
外資企業が中国など海外でCSRを展開する場合に重要となってくるのが異文化交流である。企業にとって主なステークホルダーは従業員、地域社会、消費者、株主であるが、株主以外との付き合いはすべて異文化交流となるので、海外で活動する日系企業のCSRは、異文化交流を抜きにしては考えることができない。したがってまずは日本と中国では社会、文化など何がどう違うのかを見極めた上で行動しないと意図した効果が現れないことになる。つまり日本でやっているCSR活動をそのまま中国に持ってくるのではなく、中国の社会、文化、慣習などを理解してそれにあわせた活動をしていく必要があるということである。

日系企業のCSRの取り組み
 前述のとおり独立行政法人国際交流基金が社会貢献活動に関するアンケート調査を行った。回答数353事業所で、社会貢献活動を行っているのは151事業所(42.8%)、社会貢献活動の事例は237件で、寄付金等の資金援助、物品等の寄贈・提供、社員のボランティア活動などであった。もっとも後者の数字はアンケート調査の技術的な制約により実際より過少申告されているため、実際は1千件を超えるのではないかと考えている。活動事例を地域別にみると深セン、大連、北京で特に多い。また、中国への進出時期別にみると2001年以降に進出した企業では社会貢献活動が相対的に少ないという結果となっている。これは今後日系企業の社会貢献活動の増加の余地が大きいことを現しているといえる。
 社会貢献活動に取り組む目的について、一次的な目的としては中国社会への貢献、企業市民としての責任遂行などが主なものであった。そしてこれによって最終的には企業イメージの向上、広報、従業員や組織の活性化を目指す、と考えている企業が多い。
 一方で課題も多いようだ。中国社会、地位地社会は一体どういった活動を求めているのかというニーズの把握、適切な活動の把握が困難、資金的な困難などで社会貢献活動にいたっていない企業も多い。
 活動内容の広報について、日本では「陰徳を積む」という表現に象徴されるように、地域社会に貢献していてもあえてそれを言わないという傾向がある。このためか、社会貢献活動では日系企業は欧米よりも出遅れているといわれている。この点アンケートでは、社員に向けた活動報告、経営トップによる発言・アピール、自社WEBサイトに記載、企業広報誌に記載など、何らかの手法により積極的に広報をしている事業所が約80%にのぼる。そもそもCSRは自己満足的なものではなく、社会のニーズを把握して、ステークホルダーから評価されなければ意味がない。積極的に広報していくことに大きな意味があるのである。

 日系企業のCSRは、中国においてはまだ欧米系企業に出遅れている。欧米の在中国商工会議所である「中国欧盟商会」、「中国美国商会」は2003年にそれぞれCSR委員会を設けている。「中国美国商会」のCSR委員会では、白書を作成しその中で会員企業の社会貢献事業を中文で紹介したり、米国政府に対して中国でのCSR普及に向けた活動への協力を要請するなど、重点的に活動を支援する体制を整えている。日本では2006になって中国日本商会に社会貢献委員会が設立された。また、上海日本商工クラブも2006年3月に法人として認可され、公式に活動できるようになっている。国際交流基金やこれら日系商工団体が中心になって、日系企業がCSRを積極的に実施、広報できるような土壌をつくっていくべきである。現在中国人の間では、日系企業の好感度、人気は欧米企業に比べて低い。もっと中国人に好かれる企業になるための一つの手段としてCSRを活用していただきたい。


Posted by 岩田泰 at 23:50  / セミナーの案内・報告  / この記事の詳細
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