「夢の」ウェアラブル・コンピュータ/知ってるつもりのITトレンド

2007年11月09日(金)
 
場所や時間を問わず、使いたい時に使えるコンピュータを作り出すためには、
機器そのものの利便性を極限まで高めるという課題の克服が大前提となる。

その最終形としてたどり着くのは「コンピュータとの一体化」。
つまりコンピュータが「人間の身体の一部として機能する」感覚を手にできる時代の到来、ということになるだろうか。


幼い頃に誰もが1度はあこがれた画期的な技術、そして
未来の生活における象徴的な光景として挙げられることの多い ウェアラブル・コンピュータ

仮想の世界においては、古くは「スタートレック」に代表されるSF映画、
少し時代を進めれば「ドラゴンボール」で、サイヤ人が相手の戦闘能力を
測定する目的で片眼に装着していた『スカウター』など、分かりやすい具体例も数々ある。



ウェアラブル・コンピュータは、アメリカのマサチューセッツ工科大による
概念の提唱が、そのはじまりとされている。

ちなみにマサチューセッツ工科大といえば、情報技術の最先端を行く科学者が
集まることで知られる研究所。革命的な開発がニュースで取り上げられる事も多い。


言葉の中に「着る、着用する」のウェア(wear)が含まれている通り、
衣服や装着品をまとうような感じで携帯し、状況に応じて使用が可能な性質を
持ったコンピュータを指す。

……しかしこれだけなら、既に実用化されているではないかという結論になってしまう。


実際、ウェアラブル・コンピュータの定義というのはこれだけにとどまらない。
その技術がウェアラブル・コンピュータであると認められるためには、
2つの適合条件をクリアしなければならない。


1つは「オールウェイズオン」
つまり、いつでもすぐ利用できるように、常時電源が入った状態にあること。

そしてもう1つは「ハンズフリー」
つまり、両手が空いた状態でも使えること。


この2つを満たさないものをウェアラブル・コンピュータと呼ぶわけにはいかない、というルールがあるのだ。


ウェアラブル・コンピュータの研究、開発は1970年代から専門の技術者によってはじめられており、
88年には専門の開発会社であるザイブナー社(米)が、初の商品化モデル「モバイルアシスタント」を発表した。

当時はヘルメットやヘッドホンの要領で頭部に装着するHMD(ヘッドマウントディスプレイ)の形式が開発の主流であり(後に開発、実用化された「モバイル・アシスタントV」は腰に装着できるタイプ)、業務用としてのニーズを前提に作られていたので構造も大掛かりであった。よって需要については企業や団体に限られていたようである。

日本国内においても、バーチャル・リアリティの技術が流行を見せていた時期に
重なったこともあって、主にゲーム・玩具業界における商品化の動きが印象としては強かった。しかしいずれも上記2つの条件には適合せず、いわゆる遊び道具、あるいは真似ごとの範疇を出る製品は現れなかったようだ。



新興産業として長い歴史を持つウェアラブル・コンピュータも、
実用化の例こそあるとはいえ、本格的な需要の到来までには至っていない。

国内では2003年に腕時計型のPHS「WRISTOMO」(NTTドコモ)が発売されて「ついにウェアラブルの時代か」と
一部で話題になったこともあったが、残念ながらユーザーの支持を得ることまでは出来なかった。


腕時計と一体になるまで小型化し過ぎたのが、却って操作の不便さを招いたこと。
そして、見た目があまりカッコ良くなかったこと。

理由はほぼ、この2つに集約される。


「機能性」と「ファッション性」。
どちらもコンピュータに限らず、新しい商品が大衆に受け入れられるかどうかを決める基準ともいえる要素ではないだろうか。

いくら時代の先端を走る技術であっても、
それが周りから浮いて見える光景になってしまっては、世間がついてきてくれない。


しかし携帯電話の機能がパソコン並みに高度化していることを考えても、
ウェアラブル・コンピュータが持っている能力そのものは、社会のさまざまな
現場で大いに生かせるものと思われる。

遠隔操作による手術や治療をはじめとした医療現場での有効活用や、障害者によるコンピュータ操作の補助機能といった、ウェアラブルの導入に期待が持たれている分野については、高齢化社会への対応や地域医療の充実といった意味でも特に発展が望まれるところである。



現状、一般のレベルにおいてはまだまだ商品化に乏しい状況であるが、
ウェアラブル・コンピュータが誰にとっても気軽に使えるユビキタス技術としての普及をはじめるのは、
衣服や装飾品と同じように、日常における「自然な存在」のコンピュータとして広く認識された時だろう。


思えば携帯電話も、最初はただ大きいばかりで見た目も悪く、とても日常で使えそうな印象が持てなかった。
時間は掛かっても似たようなプロセスを辿っていけば、ウェアラブル・コンピュータも現実味のあるトレンドとして社会に溶け込むことが、出来ないはずはない。


「スタートレック」や「ドラゴンボール」で憧れた『夢の世界』は、
果たして現実のものとなるのか。はたまた、夢のままで終わる結果となるのか。


(文:フィデリ編集部 松尾)

●「ウェアラブル・コンピュータ」 関連サイト●
NPO法人 ウェアラブルコンピュータ研究開発機構(チームつかもと)(http://www.teamtsukamoto.sakura.ne.jp/
ザイブナー社(米)(http://www.xybernaut.com/

 


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守備力100%の「量子暗号通信」/知ってるつもりのITトレンド

2007年10月05日(金)
現在の暗号技術では、暗号化や復元化を行うための共通鍵を
通信者同士で保有し合い、数列により暗号化された文書やデータを送受信するといった
手段が一般的である。

そして万が一、送受信中のデータが盗聴されたとしても、
暗号さえ解読されなければ安全性は保たれるもの、という認識が持たれている。

その暗号強度は鍵の複雑さに依存するため、
具体的には「DwrY8\%&61gHT……」という大量の文字列、数列をランダムに並べる
ことで、現状では解読に数億年を要するともいわれる、高レベルな複雑さを持った
暗号化生成を行うことになる。

しかし暗号を読み解く技術も同様に高度化することで、当初の数億年という数字が
だんだん小さくなっていき、やがて解読可能な範囲にまで追いつくことは、
今のままでいけば間違いなく、現実味のある危険になり得るのではないかと思える。
演算処理能力の向上によって、将来、文字列や数列による暗号が意味をなさなくなる
可能性も、十分に考えられるだろう。



個人情報保護法が施行されて以降、
世間の意識の高まりに比例して複雑さを増すセキュリティの問題だが、

盗聴や改ざんなどを阻止するセキュリティ対策に頭を悩まされている現在の
インフラ事情において、その抜本的な解決を託すまでの期待が込められた、新しい技術がある。
“究極の暗号”ともいわれている 「量子暗号」 を用いた通信手段だ。

量子暗号通信のメカニズムは、
「モノの形は他からの観測により必ず影響を受けて変化する」と説いた、
「ハイゼンベルグの不確定性原理」(ヴェルナー・カール・ハイゼンベルク/
Werner Karl Heisenberg:ドイツの理論物理学者)に基づき、

「送受信中のデータは、盗聴された瞬間に解読が不能な状態へと変化する。さらに
その変化から、盗聴の事実も必ず判明できる」といった物理論に立脚している。

実用化の際には最も需要が多いと思われる、長距離での光通信を挙げて説明すると、
情報伝達の媒体として使われるのは、電磁相互作用を媒介する光の量子、「光子(こうし)」である。



観測された対象物が、その影響で変化してしまうという性質は、
光子そのものが微弱で非常に小さく、外部の要因によって状態が変化しやすい特徴
を持つこと(不確定性原理)と関係している。

暗号化された単一(1個ずつの粒子)の光子を通信に利用することにより、
通信中に外部から、盗聴をはじめとした侵入や観測の行為を働かれたとしても、
それらの行為そのものが、微弱な量子に対して刺激を与えることにもつながるため、
量子の符号が変化して情報も読み取り不可能となる。
同時に盗聴者の検知、特定もできることから、防犯上の信頼度も高まるのだ。


(例)

 光子◎

 光子◎ →【盗聴行為】→ 光子● ※盗聴を仕掛けられると信号が変わる
                          不確定性原理
 光子◎                    (盗聴は完遂せず、行為の証拠も残る)


   ・
   ・
   ・


既存の暗号を、
「困難な計算によって解読の時間を稼ぐ、数学的見地からの技術」と表現するならば、

量子暗号は、
「計算による解読を不可能とする、物理学的技術」という表現が適当であろう。

物理学的な視点という、これまでとは全く異なる技術要素を用いて、
究極的な領域にまで安全性を高めた画期的な技術が、量子暗号なのである。



量子暗号通信は現在も、様々な企業や研究機関によって開発が進められている。
2006年6月には三菱電機・NEC・東京大学の共同プロジェクトが、量子暗号通信の
利用範囲を数百キロメートル単位に拡大するための、中継技術の開発を発表した。

しかし実用化には、まだまだ時間が掛かりそうな気配である。
単一化された量子(光子)を発生させる技術がまだ、十分でないのだ。

非常に小さくて微弱な物質を生成する困難さが、情報の盗用を防ぐ要素の未完という
大きな問題につながっているだけに、当初の理想とされていた量子暗号通信の形を
実現させるには、まだ相当の年数を要するのではないかという見方もある。


絶対盗聴不可能といわれる量子暗号通信が、社会インフラとして当たり前のごとく
存在する世の中を目指して、実用化に向けた研究がどう形になっていくのか。
今後の動向を大いに注目したい。


(文:フィデリ編集部 松尾)


●「量子暗号通信」関連サイト●
三菱電機株式会社 研究開発(http://www.mitsubishielectric.co.jp/corporate/randd/
独立行政法人 産業技術総合研究所(http://www.aist.go.jp/index_ja.html)

 

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どうなる?生体認証/知ってるつもりのITトレンド

2007年09月21日(金)
 
個人を特定、識別することを目的として使われているものには、
健康保険証や運転免許証といった身分証明証をはじめ、印鑑や顔写真、サインの
筆跡などが、アナログな手段として挙げられた。

やがてカード決済や携帯端末の普及によってキャッシュレスが進む世の中となり、
暗証番号やパスワードの入力に加えて磁気やICによるスキャンといった、簡単で
便利なシステムが登場する。

生活の基盤がアナログからデジタルへと移行していく流れの中、セキュリティーが
関係する日常のあらゆる場面で、新しい技術の実用化が急速に進んでいくことに
なったのだ。



しかしカードはもちろんのこと、
暗証番号やパスワードのような数字、記号の並びも、個人の責任で
所有、管理するという性質においては、身分証や印鑑と同じ「モノ」である。

財産価値も非常に大きいため、当然ながら紛失や盗難が原因で他人の手に
渡れば、悪用によって多大な損失を受ける恐れにもつながりかねない。
ネットワーク社会であらゆる手続きが高速化、簡略化されていく環境は、
ユーザー管理の甘さを狙った犯罪の温床となる可能性も、十分にはらんでいる。

その対策として登場したのが、
個人にしか持ち得ない不変の情報を利用した 「生体認証(バイオメトリクス)」 の技術。
簡便さを損なうことなく安全性を高める、次世代のセキュリティーとして注目されている。



生体認証とは、身体のあらゆる部分の特徴をデータ化して登録することで、
カードや暗証番号のような個人の管理、記憶を必要とせずに本人確認が行える
仕組みである。

顔の輪郭、虹彩(眼球にある膜の一部)、声紋、指紋、指の静脈など判別する部
位は多種にわたり、現在では銀行のATMをはじめ、オフィスや役所の入退室管
理、アミューズメント施設の会員識別など、あらゆる所で生体認証装置が運用さ
れている。またノートPCや携帯電話においても、指紋認証による本人確認機能
搭載の機種が発売されるようになった。


この技術が登場した当初は、


 ・体内にある固有の情報なので盗難等の心配がない
 ・不変の情報なので信ぴょう性が高い
 ・人工的な偽造が困難である



といった理由を挙げて、安全面に対する大きな期待が掛けられていた。


しかし運用が本格化するにつれて、現実には便利さや安全性よりも、
システムの抱える課題、そして脆さといったものが指摘されるようになる。


 ・固有の身体データを認証の材料に使うことへの、利用者の心理的抵抗
 ・変更のきかない情報である、という性質上の不便さ
 ・データ管理ならびに退会後のデータ破棄におけるセキュリティー上の不安
 ・退会後、再び入会する際にも以前と同じ情報を用いなければならない点



など、生体認証の弱点ともいえる部分が懸念材料の中心となっている。



さらにはゼラチンで作った人工の指紋が認証をクリアする事例が
数多く公表されている他、
大根の繊維パターンが人間の静脈と似ている性質を利用して、
大根を使った人工指が静脈認証を突破できたという発表もあるなど、
生体認証においては極めて困難と思われた「なりすまし」も行える
ことが、はっきりと証明されたのだ。

そしてこれは同時に、生体とて唯一絶対のものではないという、
このシステムの根本を揺るがす致命的な脆弱性を指摘していることにもつながる。


現実的な対応としては、複数の生体情報による認証や、
生体認証にパスワードの入力などを合わせた形式、
さらには認証の端末をユーザーが個別に所持することでなりすましを防ぐ策も
効果的であると考えられているが、生体認証以外の要素についてはもちろん、
ユーザーによる自己管理が必要となる。



ユーザーが各々のサービスを快適に利用するために、
利便性や安全性など、様々な条件が高いレベルで求められる時代の中、
生体認証が克服すべき課題は決して少なくないように思える。

いかに認証の精度を上げて、
ユーザーに安心感を与えられるシステムとして普及していけるか、
トレンドを離れて現実的な視点で考えてみる必要もあるようだ。

また同時に「100%のセキュリティーはあり得ない」という認識のもとで、
万が一のことが起きてもデータの悪用をはじめとした2次被害が出ないよう、
不測の事態における早急な対応についても、求められていくことになるだろう。


一歩踏み込んだ段階での期待は、確実な検知が可能なDNA認証技術の発展にも
注目が向けられる。現時点では体液(血液など)の検出が必要である上に、
結果が出るまで相当の日数を要するため、幅広い普及にはまだ時間が掛かりそう
だが、生体認証の枠組みを大きく変えることにもなり得る技術だけに、
今後のさらなる研究や開発が待たれるところだ。


(文:フィデリ編集部 松尾)


●「生体認証」関連サイト●
バイオメトリクスポータルサイト「info Bio」(http://www.biometrics.jp/
電子政府・電子自治体情報チャンネル「CyberGovernment Online」(http://cgs-online.hitachi.co.jp/

 


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「Web2.0」の今昔/知ってるつもりのITトレンド

2007年09月07日(金)
 
草創期のWeb は、製作者が提供する情報やサービスを
ユーザーが受け取る、という関係のみに終始していた。

やがてインターネットの普及が進んで利用人口も増加の一途をたどる過程において、
今度はユーザーの側から情報を発信する、あるいはユーザーどうしで情報の交換、
あるいは共有を行っていくことを目的としたWebの在り方が、徐々に一般的なものと
なっていった。


現在では、これまで受け身の利用が主だったユーザーが自発的に情報を発信し、
コンテンツ形成に携わることができる環境が、当たり前のように広く整っている。

このような、主としてユーザー側にWeb操作の主導権を持たせた新しいサイト構築の
形態が 「Web2.0」 と呼ばれるようになり、高度化する情報通信技術の象徴的概念として
確立したのである。



「Web2.0」という名称 については2004年、
米の出版社「オライリー&アソシエイツ」創設者であるティム・オライリー氏が
付けたものとされており、日本においては05年に入ってから用語としての認識が
広がりはじめた。

「2.0」という数字についての明確な定義は存在しないが、
例えば「USB 2.0」のようなバージョンアップの形を意味したものではなく、

「次世代におけるWebの在り方を抽象的に表したもの」というエポック的な
視点での解釈が適当とされている。


従来はBBSやチャットといった、比較的クローズドな性質を持つツールの多かった
インターネットによるコミュニケーションも、ブログやSNSといったユーザー主導型
Webサイトの登場によって、その内容が大きく様変わりした。

特に難しい操作を必要とせず、情報発信だけでなくカスタマイズまで行える
手軽さも、人気を呼んだ要因といえるだろう。

またプライベートだけでなく、ビジネスにおけるコミュニケーションの手段としても
活用されるようになり、マスメディアから社会現象として取り上げられる
「Web2.0」 の実用例も数々生み出された。



本や映画、グルメなどをテーマにしたレビューサイト、
Wikiを使っての百科辞典サイト、アバター機能やAjaxを使ってのスクロール地図機能
など、一般に 「Web2.0」 と呼ばれているものを挙げればキリがないが、

どのサイトや機能にも共通していえるのは

「ユーザーの思うままに」 「どこでも」
「リアルタイムに」 「好きな情報を送ったり、手に入れたり」

といった要素のもとに構築され、
実際に情報をやり取りすることによって、その価値がだんだんと高まっていく、
というプロセスである。


単なる双方向コミュニケーションの枠を超え、
ユーザーが主体となるメディアとしての可能性を形にした 「Web2.0」 だが、

曖昧な解釈のもとに生まれた言葉ゆえ、当初はあまりこの概念が浸透せず、
言葉だけが一人歩きしている印象を世間に与えた。

その後一応はトレンドワードとしての認知を得たものの、

「何をもって “Web2.0” なのか?」というその定義については
やはり未だにはっきりしないまま、今日に至っている。


ITに関わらず、何かの第2弾的なものを指して、
何でも「○○2.0」と名付けてしまう風潮も一時期見られたが、
さすがにこれでは「バージョンアップの形を意味したものではない」という
前述に反することになる。



トレンドのみならず マーケティング用語としての意味合いも深まるかと思われた
「Web2.0」 だが、やはり明確な意味づけがないだけに、言葉の重みに欠ける印象は
拭えず、バズワードとしての認識に傾きつつあるのは事実といえるだろう。


「Web2.0」 という言葉ありきではなく、
その概念に含まれるそれぞれのサービス内容やコンテンツの特性をしっかり
見極めることが、ビジネスに生かしていくために必要であるのは言うまでもない。


(文:フィデリ編集部 松尾)


●「Web2.0」関連サイト●
ウィキペディア 日本語版 (http://ja.wikipedia.org
Googleマップ (http://maps.google.co.jp/
株式会社 ミクシィ (http://mixi.co.jp




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