原発事故がもたらす上海日本人社会への影響あれこれ
地震発生は第4次中国進出ブームがいよいよ本格化するかと言われた矢先のことだった。今、多くのプロジェクトがフリーズしている。
ある弁護士事務所では、第4次進出ブームの煽りをうけここ1年、仕事量が激増した。が、地震発生以後「日本からのメールがだいぶ少なくなりました」と言う。
契約直前にまで進んだプロジェクトも日本本社は地震対応に追われ、サインが棚上げとなっている状況なのだ。
観光も打撃を受けている。福島県の上海事務所は、観光誘致にかなり積極的だった。先頭を走る自治体の中に食い込んで、着実にその業績を上げてきたものの、今回の地震、原発事故で目を覆う結果となってしまった。今後予想できる風評被害がさらに見通しを悪くする。本当に口惜しい。
21日の月曜日、雨の降る上海の街を、ボディに「OKINAWA」と書いた路線バスが横切った。沖縄県のバス広告だ。実にタイミングが悪い。今、中国旅行局は「日本への旅行を控えるように」とアナウンスをしている最中だというのに。
一方で、上海に事務所を出す自治体の間ではこんな議論もある。「被災している東北を尻目に、西日本が誘致合戦を展開するのはどうか」――というものだ。つまり、オールジャパンで自粛したほうがいいという意見だ。それに対して、「いや、ここはむしろ無傷でいる自治体が頑張るべきだ」との声もある。
けれども、残念ながら訪日旅行自粛の影響は九州にも出てしまった。目前の訪日旅行の9割がキャンセルとなってしまった自治体もある。風評被害とは恐ろしいものだ。
「農薬野菜は放射能汚染の野菜より安全」と市民がささやくようになった。青森のりんごも影響は免れ得ない。ちなみに久光百貨のりんごは地震発生以前に入荷したものだそう。それ以後のものについては輸入をストップしていると言う。
残してきた家族を思うあまり、鬱病に近い症状となる日本人駐在員もいるそうだ。第一の症状は「涙もろくなる」。第二の症状は「食欲、性欲の減退」。
さて、春の異動の時期。辞令で日本に帰る日本人もいる。しかもなぜかこの時期に「茨城県日立市」への転勤命令を受けた方も。『沈まぬ太陽』張りの人事か。傍から見れば実に冷酷無残な会社にも映る。
日本人留学生は頑張って募金活動を行っている。ちなみに、2008年の四川大地震では日本の赤十字から51億円の民間の募金が届けられている。四川大地震は中国の国民に“慈善活動”の目覚めを与えたが、結果、地方政府の懐に入ったり、「中抜き」が生じたりしたことで失望を招いた。以来、中国では「募金」「慈善」の意義が問われ続けてきた。
中国国民は「やるなら直接手渡す」という結論に至った。四川大地震当時、女性用ナプキンを積んだトラックを運転して四川省に向かった中国人女性の活動は、今でも語り草になっている。 |