“日中ビジネスに熱い県”福井――
福井県で講演する機会にめぐまれた。今回の福井訪問、2つ感動することがあった。ひとつは佐佳枝廼社の神主である福山泰江さんとの二十数年ぶりの再開だ。もうひとつは福井県がこんなに“日中ビジネスに熱い県”だったということを知ったという喜びだ。
中国は騙される、中国人は怖い、というような内向きな議論に終始する経営者も少なくない中で、福井県の経営者や自治体のその視線はすでに「外」に向けられていたことも、私にとっては大きな発見だった。
私の講演を聞きに来て下さった方々は、中国ビジネスの達人たちばかりだったが、それでも「いい講演でした」と言って下さったことに心から感謝している。
さて、福井県と浙江省は友好都市としても長年の実績を積んできており、平成5年には福井県浙江省経済促進機構を築き上げている。この点についても啓蒙されるところだ。つまり、福井県のトップと浙江省のトップが握手した、という形を創り上げたのだ。
中国ビジネス、煎じ詰めればトップダウンだ。「ガバメントtoガバメント」が円滑な中国ビジネスの運営に不可欠とされる中国ビジネスにあって、この機構の存在意義は大きい。「何かあったときの駆け込み寺」が十分に機能すれば、中小企業もある意味安心して中国ビジネスに臨むことができる。
友好都市の絆を単なる交流の象徴で終わらせることなく、どう「実益」に落とし込み、相互にウィンウィンにつないでいくかは、日本の各自治体に共通した今後の課題となるだろう。
話は少しそれるが、中国の省エネ・環境ビジネスなどはそれこそ「ガバメントtoガバメント」で進めなければゴールに到達しない格好の事例だ。日中の国と国とがなかなか握手できない状況にあるなか、GGM(中国出環境関連事業を手がける日系企業の連合体)がその代わりとなってビジネスの橋渡しを行おうとしている。中国の県レベルの地方政府に食い込み、そこからのトップダウンで日本の企業にプロジェクトを受注させるのが狙いだ。
興味深いのはGGMの担当者が「今後は友好都市関係をもっと活性化させたい」とコメントしていることだ。新規ビジネスを掘り起こし、ゴールにたどり着くにはこの関係を活用しない手はないのだ。
日本全国津々浦々、「友好都市」関係は築いても“今は塩漬け”になっているところも少なくない。これを見直すには、福井県やGGMはひとつの参考になるだろう。愛媛県の内子町はドイツのある都市との友好関係を学生同士の交流に生かしている。
さて、今回の出張ではこんな発見もあった。
福井県でブータンを題材にした資料館ができるという話を耳に挟んだのだ。講演を聞きに来て下さった野坂弦司氏(日本システムバンク会長)の襟元に、日本とブータンの国旗がクロスしたピンバッジが燦然と輝いていることを筆者はめざとく見つけたのである。福井県もまた「幸福度指数全国ナンバーワン」だ、ブータンと共通する要素が多分にある。
この福井市内にはかつて八路軍に参加したことがあるという日本人女性もいらっしゃるという情報も耳にした。ご高齢だとも伺ったが、今なお中華料理店「ニーハオ」の経営者を続けておいでだという。
「彼女がお元気だったときは毎年のように中国旅行を企画してくれ、私たちはそれに参加しました。中国西の最果てのカシュガルにも連れて行ってもらいました」(佐佳枝廼社の福山泰江さんのご母堂)
こうした草の根に至るまでその民間交流は盛んだ。さらに佐佳枝廼社の福山泰江さんご自身もボランティアで外国人に日本語を教え、その教え子が全国日本語弁論大会で見事優勝したという経験の持ち主でもある。ちなみに福山神主とは70年代、中央アジアの旅で出会った。
県のトップ、民間企業、そして草の根に至るまで「外に目が向けられている福井県民」との交流はいい刺激となった。こういうやる気のある県下企業には、日中ビジネスにおいてどんどん試行錯誤を繰り返して頂き、いち早く成功のモデルを築いてもらいたい、とも思う。筆者の見聞や経験がそのための一助となればなお幸いである。 |