どう生かす、日中の「姉妹都市」関係
日本の地方の名もないブランドが、中国で「一大ブランド」になりそうな気配である。
「みどり牛乳」がそれだ。
みどり牛乳は大分県の九州乳業が持つブランド。武漢市の農業企業(武漢開隆ハイテク農業発展有限公司)と合弁で武漢九州乳業有限公司を設立し、2010年からチルド牛乳の生産を開始した。
地元の中国企業が持つ「資金力」と「販売ネットワーク」、それに日本の「技術力」「ブランド力」が加わった形だ。昨年末、上海市場にも上陸した。日本の食品ブランドに「安心・安全」を求める中国市場で、手応えを感じ取る。
実はこのビジネス、32年にわたる大分市と武漢市の姉妹都市という関係が下地になっている。もともと農業を通じて交流をはぐくんで来た両都市では、農業実習生の往来が頻繁に行われていた。
消費市場も成熟に向かい、農産物や酪農製品をめぐって「多少高くても、安心できるもの」が求められる中国で、いよいよこの姉妹都市関係を生かせる時代にさしかかったようだ。
実際、このチルド牛乳プロジェクトも、「日本のイメージで牛乳を売りたい」とする武漢開隆の案件を、武漢市が大分市に持ち込んで案件としてまとめた。
「これは砂糖入りの牛乳か?」
他方、合弁とは言っても九州乳業は09年に会社生理機構へ再建計画を提出したばかり。大手ブランドに淘汰されようとするなか、厳しい時代が続いたことは想像に難くない。そんななか、同社は08年に上海の食品見本市に出展していた。中国に活路を求めていたのだろう。
当時、筆者も現地で九州乳業に取材をしている。乳牛に与える餌や飼育方法ではトップクラスともいわれるものがあり、飲み比べると格段にそのおいしさがわかる。上海のバイヤーや消費者は同社の牛乳に「砂糖入りの牛乳か?」と驚いていた。
その後、実験的な輸出に踏み切ったようだが、日本では口蹄疫が発生し、乳製品の対中輸出はストップしてしまった。
出資金額ゼロの合弁
十分な体力のない九州乳業、対中ビジネスには40年超続いたブランドの復活もかかる。そこで描いたビジネスの枠組みは、「ブランド名と技術・品質管理」を査定し、それを出資割合に落とし込む、というものだった。実際に資金は動かないものの、九州乳業は25%の出資を確保した。
九州の地元で眠っているブランドが、大陸で一大ブランドにもなる妙味がそこにある。
設備の使い方から牛乳以外の乳製品のレシピまで、「無料指導」だ。年に数回技術者が現地指導に訪れるが、経費も自社で負担。今のところは利益に浴するどころか持ち出しであるが、「3〜4年先には黒字化が狙えるのではないか」(大分市役所)との見通しもある。
舞台はあれどプレーヤーは?
さて、「姉妹都市」という日中間の関係を、どこまで実際のビジネスに落とし込めるかは各自治体の長年の課題である。税金ばかりを垂れ流して「名ばかり」を繕い続けるところも少なくない。
大分−武漢のケースは姉妹都市交流も堂々30年を超えるロングヒストリーだが、現地への進出、という視点で見ればほんの数件の事例しかない。昨年はようやく「街のケーキ屋さん」が武漢に進出を果たしたばかりだ。
30年の交流が意味するものは、地方政府間が築いた信頼である。多少のことでは揺らぐことのない基盤がある。
そしてもうひとつの妙味は、当時往来していた人物が30年を経て地元の「長」になっているケースが少なくない、ということだ。武漢市から大分市に訪れた視察団団長は今では武漢市の副市長だと言う。こうした人物が大分−武漢間のビジネス交流の地盤を強固なものにするのであれば、その舞台で踊らない手はない。
しかし現実は「プレーヤーの数が少ない」。中小企業の「石橋を叩いて」がチラつく。
ステージはある。だが、主役がいない。中小企業にとっては中国市場に進出するのは大変だろうが、そこは自治体を通じて情報を取り、現地に足がかりを掴むのもひとつではないか、と思う。(なお、「日本企業の中国牛乳ビジネス」の詳細については「Jbpress」にて来週火曜日に公開予定です) |